• 2022.11.09

ふるさと納税の返礼品に税金が課される?

 

スタッフの吉田です。今年は史上初めてサッカーW杯が11月に開催されます。

通常はヨーロッパ各国の主要リーグが開催されていない期間に開催されるW杯が、今大会はシーズン開幕から2~3ヶ月と選手のコンディションが整った状態で開催さるため、出場選手の高いパフォーマンスが期待できるのではないかと言われています。日本代表の活躍だけではなく、世界のトップによる素晴らしいプレーにも期待しましょう。

今年も残すところ2ヶ月弱となりましたが、この時期になると、駆け込みでふるさと納税をされる方も多いのではないでしょうか。

今回は、ふるさと納税を行ったことで、自治体から返礼品を受け取った際の意外な注意点について書きたいと思います。

ご存じの方も多いかと思いますが、ふるさと納税とは、生まれ故郷や応援したい自治体に寄付をすることができる制度のことです。自治体の取り組むまちづくりや復興支援などさまざまな課題に対して、寄付金の使いみちを指定できます。また、寄付金のうち2,000円を超える部分について、所得税の還付、住民税の控除(※)が受けられるとともに、寄付をした自治体によっては、お礼に地域の名産品などがもらえるお得な制度となっています。

(※)控除上限額は、ふるさと納税をする方の年収(所得)や家族構成によって異なります。

すっかり定着した制度ですが、意外と知られていないのが、自治体からの返礼品は一時所得に該当して課税対象になり得るということです。

 

一時所得とは?

 

一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。

何やらややこしいですが、国税庁のHPには、以下のようなものが該当するものとされています。

懸賞や福引の賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。)
生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます。)
遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出にあてられなかったもの

これらの内容を見ると、「ふるさと納税は、寄付金を払っているのに、なぜ課税されるの?」と違和感を覚える方もいらっしゃるかと思います。

 

寄付金は対価ではない!

 

違和感を覚える方は、寄付金は、返礼品を受け取るための対価とお考えになっているからではないでしょうか。

しかし、ふるさと納税の利用者が寄付した金額は、返礼品の対価として支払ったものではなく、あくまで自治体への寄付になります。

返礼品は、制度を活性化するために設定されたおまけであり、返礼品をもらうことは、自治体から経済的利益を受けたことになると考えられるためです。

実際にふるさと納税で受け取った返礼品の経済的利益について、税務署から所得税の申告漏れを指摘された納税者が、その判断を不服とし、国税不服審判所において税務署と争った事案があります。

税務署が返礼品を受けたったことによる経済的利益は一時所得に該当するとした一方、納税者は、「返礼品は寄付の対価であり、返礼品の受領による経済的利益はなく、申告すべき一時所得はない」と主張しました。

これに対し、国税不服審判所は、「返礼品は、各地方公共団体がふるさと納税とは別に、各地方公共団体の独自の取り組みにより、寄付者に謝礼として提供されるものと評価されるべきであり、ふるさと納税に係る寄付金と返礼品との間に対価性は認められない」と判断し、返礼品の経済的利益は一時所得に該当すると認定されました。

(ちなみに、この事例は4年間で、自治体131件に対して総額7千万円の寄付を行い、経済的利益の額は合計2,100万円弱・・・かなり極端な例ではありますが)

 

課税されるケースは?

 

それでは、ふるさと納税をしたら即課税されるのか、というと実際にはそうではありません。

一時所得の金額は、特別控除額(最大50万円)を引いて計算するため、儲けが50万円を超えない場合には、税金はかかりません。

〈一時所得の計算方法〉

総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最大50万円)

(注)上記算式により計算された金額の1/2に対して課税されることになります。

ふるさと納税の場合、寄付金は収入を得るために支出した金額とはなりませんので、返礼品による経済的利益の額が50万円を越えなければ課税はされないことになります。返礼品の金額は、はっきりとしないものも多いですが、ほとんどの自治体は寄付金よりも返礼品の金額が少なく設定されていますから、年間50万円以下のふるさと納税だけであれば、一時所得が発生する可能性はほぼないと言えます。多額のふるさと納税を行っている方でなければ、申告が必要となる可能性は低いと考えられます。

ただし、「ふるさと納税だけ」というところがポイントで、一時所得を計算する際には、上述した一時所得に該当するものが発生している場合、これらの金額を合算して総収入金額を計算することになります。

満期保険金を受け取ったから、競馬や競輪で儲かったので、ちょっと余分にふるさと納税でもしてみようかな・・・などとお考えになることもあるかもしれませんが、そのような時には、知らず知らずのうちに申告・納税が漏れてしまった・・・、といったことも考えられますので、ご注意ください。

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