• 2025.04.09

教育資金の一括贈与とは?手続きやメリット、注意点を解説!

 

祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税の規定は、高齢者世代の保有する資産の若い世代への移転を促進することにより、子供の人材育成に資するとともに、子育て世代の支援をして経済活性化を促すことを目的として、平成25年に創設されました。

 

創設された当初は、平成25年から平成27年が適用期間でしたが、たびたび改正により適用期間が延長されており、令和5年の税制改正では令和8年まで適用期間が延長されました。

 

相続対策が注目されている今、お子様やお孫様への教育資金の援助をお考えの方はぜひご覧いただければと思います。

 

 

教育資金の一括贈与とは

 

一定の期間に、直系尊属(祖父母・父母)が30歳未満の子や孫に対して教育資金を一括して贈与した場合において、その贈与した金額のうち1,500万円までの金額については贈与税の課税価格に算入しない。という規定です。
すなわち、高齢世代が子や孫に教育資金を贈与した場合であっても、1,500万円までであれば贈与税はかからない、ということとなっています。

なお、受贈者ひとり当たり1,500万円の枠となっているので、複数人の贈与者から贈与を受けたとしても、1,500万円までしか非課税とすることができない点にご注意ください。

 

この規定では、贈与をする直系尊属のことを「贈与者」、贈与を受ける子・孫を「受贈者」と呼びます。

 

適用要件

 

贈与をした際に本来かかる贈与税を非課税にする優遇措置であるため、要件は厳しく設定されています。

 

①受贈者の直系尊属(祖父母・父母)から30歳未満の受贈者(子・孫)に対する贈与であること
→贈与者が直系尊属と定められているため、血縁関係があること(養子の場合には法的に血縁関係が認められていること)が前提となります。
したがって、受贈者の配偶者の祖父母等からの贈与は対象になりません。

 

②①の贈与が教育資金管理契約に基づいて、以下のいずれかの行為がされること
・信託受益権を取得する。
・銀行等の営業所等において預金または貯金として預入をする。
・贈与に係る金銭等で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入する。

→贈与した金銭は教育のためだけに使われることが要件となるため金融機関と教育資金管理契約を結び、金融機関が資金の管理をすることとなります。

 

③贈与を受ける年の前年分の受贈者(子・孫)の所得税にかかる所得が1,000万円を超えていないこと
→ある程度の収入があると優遇税制が受けられないこととなります。

 

一括贈与制度の対象になる教育費用の範囲

 

条文では以下のように規定されています。
①学校教育方に規定する学校等に直接支払われる入学金、授業料等
②学校等以外の者に、教育に関する役務の提供の対価として支払われる金銭等

 

②の例
・学習塾、予備校、家庭教師、そろばんの月謝
・スポーツ教室、ピアノ、バレエ、習字教室の月謝
・通信教育費用
・学校指定の教材費や学用品代
・学童保育費用、通学定期代
・その他一定のもの

 

②については、直接学校等に支払をする物ではないため、条件が厳しくなっています。
支出した金額のうち、500万円までが非課税の対象となりますのでご注意ください。

 

参考:https://www.mext.go.jp/content/20240618-mxt_gakushi01-000029375-20.pdf

 

 

教育資金の一括贈与のメリット

 

一番のメリットと言われるのは【非課税額が大きい】ことです。
一般的に、贈与をした場合に非課税となるのは受贈者1人につき年間110万円までですが、この規定を利用すると、1,500万円までの金額を非課税とすることが可能です。

 

相続対策としても、相続財産が多額になると見込まれる場合には、今回の規定を利用することで節税の効果があると考えられます。

 

税制以外のメリットとしては、子・孫の教育費の負担も軽減できます。

 

 

教育資金の一括贈与の注意点

 

この制度の注意点について解説します。

 

教育資金管理契約が終了する日までの間に贈与者が死亡

した場合には、使い切れていない部分が課税されてしまう。

 

教育資金管理契約が終了する日、というのは、受贈者(子・孫)が30歳に達する日など5つほど規定がされています。
その日までに、贈与者(祖父母・父母)が死亡してしまうと、「贈与した金額-教育資金として使用した金額」の残額がその贈与者の相続財産となり、受贈者に相続税が課せられる場合があります。

 

ただし、贈与者の死亡の時において受贈者が以下の場合に該当するときは、課税されないとされています。
・23歳未満である場合
・学校等に在学している場合
・教育訓練を受けている場合
(その贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合には課税されます。)

金融機関等が教育資金として支払われた事実を領収書等により確認。

 

教育全般に関する使途が認められるものの、その規定は細かく制定されており、このチェック、記録、税務署への報告は金融機関等が行うこととされています。
よって、入学金や授業料などで資金を利用する際は、逐一領収書を学校等からもらって金融機関に提出しなければなりません。
非課税の優遇を受けるために必要なことですが、煩わしさを感じてしまうかもしれません。

 

年齢制限がある。

 

この制度は30歳未満の受贈者に対するものが対象となりますが、一括贈与した金額のうち、受贈者が30歳になった時点で使いきれなかったお金が残っている場合、その時点で「贈与」とみなされ、贈与税が課税されてしまうため注意が必要です。

 

このように、この制度はメリットがある反面、手続き面では少しハードルが高くなっているようです。
まとまった金額を一度に贈与しても、その場では税金の心配がいらないという面では今回の制度を利用することは有用ではありますが、上記のデメリットを踏まえつつご検討されることをお勧めします。

 

 

教育資金の一括贈与の手続き方法

 

今回の規定を適用するためには、「教育資金非課税申告書」を教育資金管理契約を締結した金融機関に提出しなければなりません。
最終的な提出先は税務署ですが、金融機関を経由して提出されるため自身で税務署に出向く必要はありません。

 

細かな内容は国税庁のHPに記載がありますのでご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/201304_01.htm

 

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか?
今回の規定は、贈与税が非課税となるものですが、相続対策としても注目されている制度でもあります。

 

適用を考えている方がいらっしゃいましたら、参考にしていただければ幸いです。

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