消費税の課税選択の変更に係る特例について
2020.06.09
業績悪化で役員報酬を減額できる?条件や手続きについて解説!
昨今の物価高による原価の高騰、従業員の給与支給額アップなど、企業を取り巻く状況は厳しく、経営状況が厳しい企業が増えてきています。
そんな中、すぐに対策しやすい役員の報酬を下げることをお考えの方も多いかと思います。
しかし、年度途中での役員報酬の減額には税務上の判断から、損金にできないなど注意が必要です。ただし、一定の条件から、減額が認められる場合もありますため解説していきます。
業績が悪化した際にコスト削減の一環として,役員報酬の減額は選択の一つです。
業績悪化を理由とする場合は、大きく悪化したという事実が必要で、例えば経営状況の悪化によって株主や債権者、取引先など、第三者に影響が及べば認められます。
たとえ業績の悪化を理由としても、一時的な資金繰りの都合や単に業績が悪くなったなどの理由の減額は認められません。
「業績悪化改定事由」に当てはまるかどうかについては、通達により、以下のように定められており、単に業績が悪化したのみの理由で認められるものではありません。
法人税基本通達9-2-13(抜粋)より
(経営の状況の著しい悪化に類する理由)
9-2-13 「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。
事業年度の途中で役員の増減があった場合
役員が年度途中で増員した場合は、年度の途中だとしても報酬額の変更を損金とすることが可能です。
反対に役員の年度途中での退任理由による減額措置は可能となります。
役員の職制上の地位の変更や職務の内容に変更があった際にも報酬変更が可能な場合があります。
例とて年度の途中で社長が退任し新たな社長が就任するようなケースが該当します。
その他役員の病気療養などによる、職務執行ができないなどの減額改定も改定事由に該当します。
役員報酬の減額を決めた時、税制上のルールに従って変更する必要があります。
役員報酬が企業の損金に認められなければ、法人税の金額に影響を与えてしまいます。
詳しい手順を解説していくので参考にしてください。
役員給与を減額した場合の効果として、減額した分だけの赤字幅が抑えられ
また、役員給与にかかる会社負担分の社会保険料の出費を抑えることができます。
役員報酬の金額を決定し、定時株主総会にて決議する必要があります。
前期と同額としても議事録が必要となりますのでご注意ください。
株主総会を開催します。株主総会での決議がなければ変更が無効となるので注意してください。変更の決議は通常の株主総会と同じ形式です。
株主総会を実施する際には、株主への招集通知を2週間前までに行います。
通知書には開催する日時や場所、目的などを記します。
オンラインで実施する際には開催方法や参加の有無などの資料の添付も必要です。
会社法によって定めがあるため、報酬変更については議事録として残しておかなければいけません。税務調査の際に正しい手続きをしている証拠となるため、必ず作成することが肝心です。
変更する前の報酬額
変更した後の報酬額
変更する理由
変更する時期
決議内容
総会を開催した日時
総会を開催した場所
議長名
議事録を作成した日 など
これらの内容を議事録に含めます。
作成した議事録は10年間保管します。
役員報酬を変更したことで発生する税務上の手続きや年金事務所への届出を提出する必要もあります。場合によっては、年金事務所に報酬変更により、月額変更届を提出し社会保険料の等級変更をしなくてはなりません。
報酬額変更につきましては、十分に確認した上で申請をし、もしも不安な場合は、専門家のアドバイスを受けながら実行すると安心です。
役員報酬を変更したタイミングごとに伴う、税務上の取り扱いをみていきます。
《事業年度開始から3カ月以内》
役員報酬の変更は、事業年度開始から3カ月以内に実行します。この期間内であれば、損金算入が可能です。
ただし、3カ月以内の時期でも改定は1度きりしか実施できないため注意してください。
《事業年度開始から3カ月経過後》
役員報酬を事業年度開始から3カ月経過後に変更すれば、以下のような取り扱いとなります。
・増額した時
3カ月を経過した後に増額をすれば、増額分の損金算入はできません。例えば、期首が4月1日で月50万円の報酬が、8月から月80万円になるとします。
その場合、損金算入できる額は毎月50万円です。差額の30万円は法人税が発生するため注意してください。
ただし、例外として新任役員の場合や既存の役職から昇格した時には、3カ月を経過していても損金算入が可能です。
・減額した時
減額した場合も増額と同じで3カ月以降は原則として損金算入が認められていません。
期首が4月1日で、月50万円だった報酬額が8月から月35万円となれば、4月から7月も損金算入できるのは35万円となり、差額の15万円に対しては法人税が発生します。
ただし、特別な事由があれば例外として減額が可能です。
役員の降格
役員の懲戒処分
役員の病気や怪我
会社の業績悪化
上記のような状況になれば、例外となるため損金算入ができる可能性があります。
FLAIRでは、税務相談はもちろんのこと、経営管理、事業承継、業務改善についてもご支援してまいります。
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監修 税理士法人FLAIR 代表社員 福島美由紀