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2024.07.10
競馬で「外れ馬券」は経費になる?最高裁判決が示した新常識
競馬で大穴を当てて大金を手に入れた…!
そんな時、実はその払戻金には所得税がかかることがあります。
通常、競馬の賞金は一時所得とされ、ある程度の金額は所得税がかからないようになっています。
ただし、あまりにも大きい賞金の場合は、一定の金額を超えた金額には所得税が課税されてしまいます。
もし、所得税の申告をしなければならないほどの賞金を手に入れたとき、「今までの外れた馬券も経費になったらいいのにな…」と思った方は多いのではないでしょうか。
実は、外れた馬券も経費となった事例はいくつかあります。
今回はその外れ馬券が経費になった事例と、経費となるための要件についてお伝えします。
ある元会社員が、馬券の自動購入ソフトに独自の条件設定や計算式を加え、インターネット上で馬券を大量購入しており、その購入額は28.7億円、払い戻し金額は30.1億円でした。
この場合の儲けは、その差額に相当する1.4億円、これを「雑所得」として申告しました。
これに対し、国税庁と検察はこの所得を「一時所得」として5.7億円の脱税だと指摘しました。
ただし、実際の儲けは1.4億円、5.7億円の税金を課されたら4.3億円の赤字であり、納税者は納得できず、当然ですが裁判となりました。
納税者側はこの払戻金は「一時所得」ではなく「雑所得」であると主張しました。
「雑所得」であれば幅広く経費が認められ、外れ馬券も費用として算入できるためです。
結局、一審大阪地裁、二審大阪高裁に続き、最高裁においても納税者の主張が認められ、「外れ馬券は経費」ということが確定しました。
北海道の男性は6年の間に、インターネット上で72.7億円の馬券を購入、5.7億円の利益を得ました。
この時、払戻金は「雑所得」に該当し、外れ馬券分を経費に算入して申告したところ、札幌国税局は払戻金を「一時所得」に該当するとして、外れ馬券分を経費と認めず約1億9千万円の追徴課税処分を言い渡しました。
上記と異なる点としては、自動購入ソフトを利用せず、自身のノウハウに基づいて購入をしていた点です。
上記と状況は異なりますが、この場合も二審・東京高裁判決で継続的に利益を得るための活動であったとして「雑所得」として認められ、「外れ馬券は経費」となりました。
それなら、私も経費にしよう!と思われた方もいるのではないでしょうか?
しかし、簡単に外れ馬券を経費にできるわけではありません。
外れ馬券が経費となる事例のポイントは、馬券の払い戻しが「雑所得」に該当するものなのか、という点にあります。
所得税法では「一時所得」を「営利を目的とする継続的行為以外」と定めており、
通達では「競馬の馬券の払戻金」は「一時所得」に分類されています。
一時所得は、「収入に直接要した金額」を経費として考えるとしています。
つまり事例の場合では、通常当たり馬券の購入費用しか経費として認められません。
一方で、「雑所得」は「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」と定められています。
すなわち、ほかの所得にはならないけれど、営利を目的とする継続的行為から生じたものに該当する場合はこちらの雑所得になります。
雑所得は、「必要経費」を経費として収入から控除することができます。
上記の事例で、外れ馬券まで経費とできたのは、この雑所得に該当するためです。
この「営利を目的とする継続的行為」に該当するかどうかの判断は、行為の期間、回数、頻度、利益発生の規模等を総合的に判断されます。
上記2つの事例は
・ほぼすべてのレースで馬券の購入をしていたこと
・年間を通じて利益が得られるよう工夫をしていたこと
・自動購入ソフトを利用しているまたは一定のパターンに従った購入をしていること(個々のレースでの勝敗を目的としておらず、年間を通じて利益を得ることを目的にしている)
以上の理由により「営利を目的とする継続的行為」に該当すると判断がされたため、雑所得と最高裁が判断しました。
したがって、利益を得るために並々ならぬ努力をした場合に、経費として認められるため、簡単に外れ馬券を経費とすることはかなり難しいと言えます。
いかがでしょうか?
独自のソフトや自身のノウハウを駆使して全国のほぼ全てのレースに賭けるという、証券トレーダーさながらの購入方法は極めて特殊であり、このようなケースはあくまで例外と言えるかもしれません。
ですので、今後も大半のケースは経費として認められないことでしょう。
大当たりを夢見て外れ馬券をかき集めても、通常は何の役にも立ちません。
そもそも、そう簡単に大当たりは出ないかもしれませんが…
ご参考になれば幸いです。