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2022.06.01
税務調査とは?当日の流れや必要書類などを徹底解説!
今回は、元国税調査官の方の経験に基づいた、税務調査とは何か?当日の対応や必要書類などについて、お話ししたいと思います。
税務調査には、「強制調査」と「任意調査」の2種類があります。それぞれどのようなものかを解説します。
脱税の疑われる納税者に対して、裁判所の令状を得て強制的に行う調査です。納税者はこの調査を拒絶できません。
一般的な税務調査のほとんどは、この任意調査です。任意とはいえ、税務調査官は税金に関する質問を行うことができる「質問検査権」を有しているので、質問されたことについて黙秘、虚偽の陳述はできません。一般的には、納税者又は担当税理士に対して、電話又は文書により事前通知があります。(稀に事前予告なしで調査官が訪問してくるケースがあります)以下、任意調査を前提にお話しさせていただきます。
任意調査では、帳簿類や申告書の確認作業が行われることになります。事前の通知があった場合、調査当日までに必要書類をしっかり揃えておきましょう。なお、事前の通知の際に、税務署からどの期間の資料を準備するかの指示があります。一般の調査では、直近3年又は5年というのが大半です。
主な必要資料は、以下のようなものです。
・総勘定元帳(会計ソフトで保存されている場合には、印刷しておきましょう)
・請求書、納品書、領収書などの書類
・各種契約書
・株主総会議事録、取締役会議事録
・一人別源泉徴収簿など給与等に関連する帳簿・資料
当日午前10時ころに、調査官が会社を訪問します。まず、世間話から始まります。もちろん、この世間話も調査の一環ですので、余計なことまで言葉にしてしまい、税務調査の範囲が広がったり、まったく問題にないところが問題として受け取られたりするおそれもありますので注意が必要です。ちなみに、概況調査時の調査官を観察することで、今回の税務調査のポイントを読み取ることができる場合があります。特定の項目のみを詳しく聞いてくる場合は、準備調査で問題意識を持っていた項目である可能性があります。
概況調査の後は、経理の流れを確認します。売上や仕入、経費が、どの資料をもとに、誰によって、どのタイミングで記帳され、どのような会計データにつながるのかという一連の流れをヒアリングします。
まず、事前に依頼していた資料の準備状況の確認をします。準備資料の確認を通して、さまざまな質問があります。調査官の最終目標は、課税額が正しいかどうかの確認ですので、売上が過少に計上されていないか、個人的な支出が経費に計上されていないか、固定資産や繰延資産として計上しなくてはならない支出にもかかわらず経費処理していないか、などで検証されます。
たとえば、売上計上時期のチェックのために、まず、収益の計上基準を確認し、出荷基準の場合は期末日に近い出荷伝票をチェックして売上に適正に計上されているか確認します。必要に応じて、売上入力担当者にヒアリングを行う場合もあります。経費の調査は、たとえば、交際費の計上基準を確認して、会議費や福利厚生費等の中に交際費に該当する支出がないか確認します。
調査官が社長等についていき、金庫や机、ロッカーの中を確認(現況調査)する場合があります。現況調査によって重加算税の賦課につながる資料が見つかることがあります。現況調査を避けるためには、調査官から提示の要求が想定される資料は、あらかじめ準備しておき、あやしまれないことが重要です。
調査官が、棚卸資産や貯蔵品、固定資産等の会社の資産を実際に現場に行って確認する場合がありますが、倉庫に行ってみたところ計上されていない商品の在庫があったり、あるはずの在庫が消えていたりすることがあります。
反面調査とは、調査対象者の取引先に対して実施される税務調査のことです。調査官の質問に対し、あいまいな答弁を繰り返したり、帳簿や証憑が保存されていなかったり、記帳が不正確な場合、調査官は十分な調査ができないと判断し、反面調査の可能性が高くなります。
このように、税務調査は様々な方法で行われるため、必ずしも、事前通知の際に告げられた予定日数で終わるわけではありません。予定期間で終わらずに、納税者に質問を投げて、もしくは、調査官が持ち帰って内部検討をして会社に後日来ることもよくあります。後日の来社を避けるためには、調査官からの資料要求や質問に対して、できる限り迅速に対応することが必要です。
最近の税務調査で大きな論点となるひとつに「質問応答記録書」があります。これは、課税要件の充足性を確認するうえで、事実関係の正確性を期すため、その要旨を記録し、調査官が税務署長に報告するために作成する行政文書のことです。しかしながら、実際は、この記録書を作成する調査官の本当の目的は、「調査時に重加算税の対象となり得るような事案が発覚したが、客観的な証拠資料がない。」といったような場合、その内容を記録し、納税者からの署名・押印を得ることで、これを証拠資料として課税することにあります。
調査官が重加算税にしたいときには、記録書には、次のようなワードが入ります。
質問応答記録書は、法律上、必ず作成しなければならない文書ではありませんので、納税者がサインする義務はありません。ご注意ください。
税務調査の対象は、国税局のシステムで分析した結果、調査必要度が高いとされた法人(個人事業者)を抽出し、決算書や蓄積された資料を検討した上で、選定されているそうです。決算書に大きな動き(急速に売上が増加している、常識的な範囲を越えた経費が計上されている)がある法人(個人事業者)の他、消費税の還付が発生している、海外取引が多い、過去に重加算税の賦課があったなどの事情がある場合には、選定されやすいと言われています。
また、国税庁から公表されている不正発見割合の高い業種や申告漏れ所得金額が高額な業種に該当する法人(個人事業者)も要注意です。ちなみに令和3年の不正発見割合の高い業種1位は、「その他の道路貨物運送」、不正1件当たりの不正所得金額の大きな業種1位は、「情報サービス、興信所」でした。
それぞれ上位10位まで、国税庁が公表している「法人税等の調査実績の概要」で確認することができますので、ご興味がある方はご覧ください。
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/hojin_chosa/pdf/01.pdf
税金に関する知識には難しいものもあり、初めての税務調査に不安な気持ちになる方も多いかと思います。重要なのは、事前にしっかりと準備をしておけば何も怖いことはありません。税務調査について、疑問点等がございましたら、何なりとご連絡をお待ちしております。
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