• 2024.07.24

法務局における自筆証書遺言保管制度とは?

 

今回は「自筆証書遺言書保管制度」を紹介いたします。

 

自筆証書遺言書保管制度とは

 

「自筆証書遺言書保管制度」とは遺言の形式(普通方式)のうち、「自筆証書遺言」に関して新たに創設された制度です。
まず、遺言の形式(普通方式)には「自筆証書遺言」を含めて下記の3種類があります。

 

①自筆証書遺言

遺言者が手書きなど自筆で書く遺言です。
遺言者自身で手軽に作成できるため、内容の変更も簡単にでき、他人に内容を知られずに作成できます。
一方で、専門家のチェック無く作成できるため、内容の不備により、遺言が無効とされてしまうリスクや、遺言者自身が保管するため、紛失してしまう、相続人等による廃棄・隠匿・改ざんなどの恐れがあることがデメリットとされていました。

 

②公正証書遺言

公証役場で公証人に作成してもらう遺言です。
公証役場で作成するため、遺言書の不備による無効や、遺言書の紛失などの発生を防ぐことができます。
一方で、証人2人が必要になることや、遺言の内容が他人に知れてしまうこと、自筆証書遺言に比べて、費用や手間がかかることがデメリットとされています。

 

③秘密証書遺言

遺言を作成後封印し、公証役場で秘密証書遺言の存在を証人に保証してもらう遺言です。
他人に作成後封印するため、内容を他人に知られず、一般的に公正証書遺言より費用が安く済む場合が多いです。
一方で、作成後封印するため、内容の不備が発生する可能性があることや検認手続きが必要なことがデメリットとされています。

 

上記「①自筆証書遺言」について、遺言者自身が保管する方法に加えて、2020年7月10日より法務局で遺言書を保管することが可能になりました。
この制度は、従来の自筆証書遺言の問題点を解決することを期待して設けられたものです。
制度のメリットについて、ご紹介させていただきます。

 

 

自筆証書遺言書保管制度のメリット

 

①遺言書の紛失・廃棄・隠匿・改ざんを防ぐ

自筆証書遺言書は、手軽に作成でき、費用がかからないというメリットはあるものの、遺言者やその家族が保管する以外の方法がありませんでした。
金庫や机の引き出しなどわかりやすい場所に保管されることが多い一方、紛失するケースも後を絶たず、相続人が発見できないということもよく見受けられます。
また、ご自身又は家族のお手元で保管されていることで、自身に不利な内容が記載されていた相続人が、自筆証書遺言の廃棄・隠匿・改ざんを行うことを防ぐことが難しくなっておりました。
自筆証書遺言書保管制度を利用すると、自筆証書遺言書の原本は法務局の管理課で保管されますので、廃棄・隠匿・改ざんのリスクはなくなります。
また、遺言者の死亡後、ある相続人が遺言書の閲覧をした場合等には、その他の関係相続人に通知が行われるため、遺言書が発見できないということを防ぐこともできます。
なお、あらかじめ遺言者が希望した場合には、遺言書保管官(法務局)が遺言者の死亡の事実を確認したとき、遺言者が指定した相続人等に通知が行われるようにすることも可能です。

 

②遺言書の形式要件をチェックしてもらえる

法務局が自筆証書遺言書を預かる際には、民法で定められている自筆証書遺言の形式要件を満たしているかどうかのチェックが行われます。
そのため、形式不備のため遺言書が無効になるリスクを回避することができます。

 

③遺言執行の際の検認手続が不要になる

自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認手続きを受けないと、遺言書の執行をすることができません。
検認手続きとは、家庭裁判所が相続人に対して、遺言の存在を知らせるとともに、遺言書の内容を確認し、遺言書の改ざんなどがされずに開封されたことを証明するための手続をいいます。
検認手続きには、一定の時間と費用が必要となります。
しかし、自筆証書遺言保管制度により法務局で保管された自筆証書遺言については、この検認義務が免除されます。
従いまして、自筆証書遺言保管制度を利用した場合には、検認手続きに要する時間と費用を節約することができます。

 

 

自筆証書遺言書保管制度のデメリット・注意点

 

上述のように利点の多い自筆証書遺言証書保管制度ですが、デメリットとまでは言えないものの、注意しなくてはならない点も存在しますので、こちらもご紹介させていただきます。

 

①形式はチェックしてくれるが、遺言書の内容はチェックしてくれない

上述のとおり、遺言書の形式については法務局でチェックをしてくれますが、遺言の内容に関するチェック、アドバイスはしてくれません。
遺言の内容に関する相談がしたいということであれば、事前に専門家に相談する必要がありますので、ご注意ください。

 

⓶遺言書の様式等に定めがある

法務局では、一定の様式等のルールを守っている遺言書でなくては、保管することができません。そのため、既に作成した自筆証書遺言書が、この様式を満たしていない場合には、新たに遺言書を作成する必要があります。

 

③遺言者本人が法務局に出頭しなくてはならない

法務局での申請手続きは、必ず遺言者本人が法務局に出向く必要があります。
足が不自由、病院から外出することができないなど移動が困難な理由があっても、代理人を立てることは認められておりませんので、ご注意ください。
なお、特定の法務局が遺言書保管所として認められていますが、近所の法務局が遺言書保管所に該当しないこともありますので、こちらも注意が必要です。

 

自筆証書遺言書保管制度の手続きの流れ

 

保管申請を行えるのは「遺言者の住所地」「遺言者の本籍地」「遺言者が所有する不動産の所在地」のうち、いずれかを管轄する法務局とされています。
具体的な手続の流れについては、法務省が作成した案内がHPに掲載されておりますので、
ご興味がある方はご覧ください。

自筆証書遺言書保管制度のご案内

自筆証書遺言書保管制度について

 

まとめ

 

簡単に作成できる自筆証書遺言ですが、反面、安全性・信頼性といったところでは、公正証書遺言や秘密証書遺言よりも劣ります。
その部分を補うために設けられたのが自筆証書遺言保管制度になります。
なるべくコストを掛けずに遺言書を作成したいといった場合には有効な手段となり得ますが、あくまで紛失、改ざん等のリスクをなくすこと、形式を満たした遺言書を作成することを目的としており、具体的な内容については、法務局では対応してくれません。
内容をしっかりと検討したいという方は、別途専門家へ相談することをおすすめいたします。

税理士法人FLAIRでも遺言書を始めとして、相続に関する相談を主に税務の観点から承っております。
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