業務上横領が発覚したらどうする?どうなる?
2021.06.09
令和2年改正!居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の適正化とは?
スタッフの箱田です。
今回は令和2年の税制改正による、「消費税の居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の適正化」について、改正の背景から紹介させていただきます。
消費税の計算では、課税売上げの際に預かった消費税から、課税仕入れの際に支払った消費税を差引いて差額を納付し、
課税売上げの際に預かった消費税よりも課税仕入れの際に支払った消費税の金額が大きい場合は、差額が還付されます。
この計算方式を「【1】全額控除」と言います。
しかし、A.課税期間における課税売上割合95%以上、B.課税期間における課税売上高5億円以下、の要件のうち、
ABどちらか一方でも満たさない事業者は「【1】全額控除」の計算方式を利用できず、
「【2】個別対応方式」と「一括比例配分方式」という計算方式のどちらかを選択することが取り決められています。
(「一括比例配分方式」については、今回は割愛させていただきます。)
この「【2】個別対応方式」では、課税仕入れを対応する売上別に、下記の3つの区分に分けたうえで、
課税仕入れの際に支払った消費税のうち「課税売上に対応する部分の金額」(下記①と③×課税売上割合)のみを、
課税売上の際に預かった消費税から、差引いて計算することになっています。
①課税売上げにのみ要する課税仕入れ → 全額が控除できる
②非課税売上げにのみ要する課税仕入れ → 全額が控除できない
③共通して要する課税仕入れ → 課税売上割合を乗じた金額だけ控除できる。
従前は「【2】個別対応方式」を適用する事業者が住宅貸付用の建物を仕入れた際の取得費用は、非課税売上げである家賃収入に対応するため、「②非課税売上げにのみ要する課税仕入れ」に該当し、仕入税額控除が認められていませんでした。
しかし、家賃収入と併せて、投資商品販売等の課税売上を発生させることで課税売上割合を95%以上に上昇させ、
上記「【1】全額控除」を利用して仕入税額控除ができるようにし、消費税の還付を受けるという節税スキームが行われることがありました。
また、居住用賃貸建物の取得費の取り扱いに関する訴訟が頻発している状況もありました。
そのような背景から、令和2年4月の税制改正により、令和2年10月1日以降に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととされました。
※「居住用賃貸建物」とは「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するもの」と定義されており、まとめると「住宅貸付用の建物(用途が不明な場合を含む)で、取得・建設した価格が税抜1,000万円以上の資産」となります。
この改正により、居住用賃貸建物の取得に係る消費税額は、「【1】全額控除」を利用する場合等も含めて仕入税額控除の対象とならないものとなり、訴訟の対象等になっていた居住用賃貸建物の取得費用の取り扱いが明確化されました。
なお、上記で紹介した改正内容の通り居住用賃貸建物の取得費用の仕入税額控除を一律に制限すると、かえって不合理になるケースが生じます。
例えば、居住用賃貸建物を取得した後、事業用に転用した場合や譲渡した場合の収入は課税売上に該当します。
そのため、本来、取得費用のうち事業用や譲渡に該当する部分は、課税売上に対応する課税仕入れとして、仕入税額控除できることが整合的です。
そこで、令和2年の税制改正では、居住用賃貸建物を取得した後、事業用に転用したり譲渡した場合に要件を満たせば、
事後的に仕入控除税額を加算する制度も併せて新設されました。
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