従業員の資格取得費用等を負担した場合の取り扱い
2022.06.01
要検討!サラリーマンの経費を引ける特定支出控除とは?
2022年も残すところわずかとなり、来年から転居や資格取得、大学院への進学といった新しいチャレンジをしようと思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、これらのチャレンジには出費がかさみます。
ただ、サラリーマンの所得を計算するにあたって、これらの支出を差し引くことができる仕組みがあります。今回はこの仕組みである「給与所得者の特定支出控除」について説明いたします。
事業所得(事業を営む人とその事業から得られるもうけ)では計算時に実際の支出額を必要経費として差し引くことができます。一方、給与所得では、給与収入を得るために費やした実際の経費を差し引くことはできず、収入金額に応じて、概算で給与から必要経費相当額を差し引くことになっています。
(詳しくは、国税庁HPをご覧ください。)
しかし、給与所得者でも給与を差し引ける「特定支出控除」という制度があります。「特定支出控除」とは、一言でいえば「給与所得から一定基準を超えた特定の支出分を差し引ける制度」となります。では、その内容について見ていきましょう。
「特定」という名称がついているように、どんな支出でもよいわけではなく、下記の7種類が対象となっており、且つ「業務の遂行に直接必要な支出」でなければなりません。
- 通勤費
- 職務上の旅費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費(簿記、英検、弁護士、公認会計士、税理士等の資格)
- 帰宅旅費
- 勤務必要経費(図書費・衣服費(スーツ等)・交際費)※上限65万円
例えば、給与収入が500万円のサラリーマンの場合は以下の基準を超えている必要があります。
・給与収入額 :500万
・給与所得控除額:500万 × 20% + 44万 = 144万
となるため、特定支出控除は144万円の1/2、つまり支出が72万円を超えることで適用することが可能となります。
それでは、最後にどうすれば特定支出控除の適用を受けることができるのか?について説明いたします。具体的には、下記の4つの手続きを行う必要があります。
- 確定申告書の提出
- 特定支出控除を受ける旨・金額を申告書に記載
- 特定支出控除証明書を申告書に貼付
- 特定支出に係る支出の事実と額を証する書類(領収書等)を申告書に添付又は税務署に提示
ここまで読んでくださった方の中には、ハードルがかなり高いと感じた方もいらっしゃるかと思います。実際の利用者はかなり少なく、平成29年では0.0031%しか使われていませんでした。
やはり、「適用するための金額が高い」「業務の遂行に直接必要な支出でなければならない」「給与支払者の証明をもらう必要がある」ことが、利用者が増えない原因と考えられます。また他の理由としては制度そのものを知らない場合もあるかと思います。
「適用するための金額の変更」や「手続きの簡素化」といった、利用するためのハードルが下がることで、働く人が皆、自らの教育や研修に投資することに前向きになることを願っています。
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