• 2022.08.24

副業(事業所得)か、小遣い稼ぎ(雑所得)か

 

スタッフの西川です。

 今回取り上げるテーマは、副業を行なっている方に大きな影響が及ぶかもしれない、所得税法上の「事業所得」と「雑所得」の区分の明確化の動きに関する話題となります。

 

今般、国税庁より、所得税基本通達の一部改正(案)がパブリックコメントに付されており、年間収入が300万円以下の副業は、事業所得ではなく雑所得として取扱う旨の判定基準が記載されています。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410040064

本業があって、副業部分を事業所得として青色申告する場合、青色申告特別控除が受けられたり、事業が赤字の場合には本業部分の所得と損益通算が可能といった税制面での優遇措置が受けられましたが、令和4年分の申告からは収入金額で線引きがされる形となり、該当する多くの方が申告区分を見直すことになると思われます。

また、年間300万円以下の副業収入である納税者は、恐らくほとんど税理士に申告を依頼することはないと思われます。

そうであるならば、納税者自身が事業所得としての正当性を反証することは可能ではあるものの、実態としては税務当局の指導に従うことが考えられることから、なおさらこの通達改正の影響力は大きなものとなるのではないでしょうか。

 

個人の所得税制は、遡ること令和2年1月より、基礎控除に対する改正が図られ、同時に給与所得控除の縮小や所得金額調整控除の創設などを踏まえた所得税増税の傾向が見えた半面、働き方の多様化に沿ったものとし、働き方改革の後押しとなる税制に見直すことが謳われていました。

近年では副業への様々なチャレンジが知見の深まりにもなり、結果として本人のパフォーマンスが向上するなどの効果から、社内規程で副業を認め、推奨する企業も珍しくはありません。

ただ、多くは本業に影響のない範囲で認めることから、年間収入が300万以下となることも多いでしょうし、小規模な副業者にとって、リスクを取ってチャレンジすることが躊躇われることとなれば、この点では働き方の多様化を阻害することとなります。

今回の通達改正の背景としても、「国税庁においては、・・・「副業に係る所得」について、適正申告をしていただくための環境づくりに努めているところ、・・・」としていますが、税務行政との帳合の難しさを感じるところです。

 

冒頭、「副業を行なっている方に大きな影響が及ぶかもしれない」と申し上げましたが、以上の通り確実に影響が及びますね。

なお、このパブリックコメントの受付は8月31日が締切りとなり、この通達改正は令和4年分の申告、つまり今年分からとなりますので、対応策を考えるとすれば早急に検討が必要となります。

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