退職金制度はどうしたらいい?中小企業退職金共済(中退共)制度の概要やメリットデメリットを解説!
2023.10.10
賃上げ促進税制とは?所得税拡大促進税制との違いや活用方法を解説!
最近、最低賃金の引き上げ幅が過去最大であると話題ですが、人件費が経営を圧迫するのではないか…と不安になる中小企業の経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。
従業員としては嬉しいですが、企業の負担増は免れません。
そこで、賃上げをしてくれた企業に優遇を!と創設された「賃上げ促進税制」の適用を検討してみるのはいかがでしょうか?
今回は、中小企業者向けの賃上げ促進税制について解説します。
賃上げ促進税制とは、一定の要件を満たす法人や個人事業主が、前年度より給与支給額等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主の場合は所得税)から控除できる制度です。
人材確保、育成への投資を促す目的で創設された「人材確保等促進税制」と
中小企業の積極的な賃上げに取り組む企業を応援する目的で創設された「所得拡大促進税制」が一本化されました。
所得拡大促進税制は、平成25年度税制改正において、アベノミクスの一環として個人所得の拡大を図る観点から、税制措置により企業の労働分配を促すことを目的に創設された税制です。
この所得拡大促進税制をベースとして、さらに内容を拡充したものが賃上げ促進税制となっています。
具体的な違いとしては、控除額です。
所得拡大促進税制:最高25%
賃上げ促進税制:最高35%(大企業向け)or 最高45%(中小企業向け)
となっており、賃上げ促進税制の方が控除額が大きくなっています。
〇令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度
〇個人事業主については、令和7年から令和9年の各年
〇青色申告書を提出している中小企業者等(資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人、その他一定の法人)
〇従業員数が1,000人以下の個人事業主
〇必須要件
以下の①の金額が②の金額と比べて1.5% or 2.5%以上増加すること
①適用事業年度における全従業員に対する給与等の支給額
②適用事業年度の前事業年度における全従業員に対する給与等の支給額
計算式:(①-②)÷② ≧ 1.5% or 2.5%
〇上乗せ要件その1
以下の2つの要件のいずれも満たすこと
・以下の①の金額が②の金額と比べて5%以上増加していること
①適用事業年度における教育訓練費の額
②適用事業年度の全事業年度における教育訓練費の額
計算式:(①-②)÷ ② ≧ 5%
・以下の①の金額が②の金額と比べて0.05%以上であること
①適用事業年度の教育訓練費の額
②適用事業年度における全従業員に対する給与等の支給額
計算式:(①-②)÷② ≧ 0.05%
〇上乗せ要件その2
適用事業年度中にくるみん認定やえるぼし認定を取得していること
以下のいずれか小さい金額とされています。
①「控除対象雇用者給与等支給増加額 ✖ 控除率」
※控除対象雇用者給与等支給増加額=適用事業年度における全従業員に対する給与等の支給額-適用事業年度の前事業年度における全従業員に対する給与等の支給額
②適用事業年度の法人税額又は所得税額 ✖ 20%
なお控除率は上記の要件に応じて定められています。
〇必須要件
1.5%の場合:15%
2.5%の場合:30%
〇上乗せ要件その1
控除率に10%上乗せ
〇上乗せ要件その2
控除率に5%上乗せ
【注意点】
適用にあたっては様々な注意点がありますが、特に気をつけていただきたい点を2点紹介します。
・適用を判定する際の給与の支給額からは、雇用安定助成金等の給与の補填額を控除する必要がある。
・従業員には、役員、役員の親族や内縁の妻、使用人兼務役員は含まれない。
特に役員の親族が含まれない点は見落としがちな点となりますのでご注意ください。
【補足事項】
今回ご紹介した中小企業者向けの制度のみ、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を翌年度以降5年間にわたり、繰越が可能となっています。
適用要件等、詳しくは中小企業庁からガイドブックが公表されていますので、こちらをご覧ください。
中小企業向け「賃上げ促進税制」
給料をアップすることで、社員のモチベーションのアップを図ることができ、さらに法人税の優遇措置も受けることができます。
給与負担が大きくなりますが、納税資金の負担が小さくなります。
デメリットとしては、制度を適切に適用するにあたっての手続きの負担が多少は生じてしまうことが上げられます。
また、何も考えず、給与の支給額を上げれば良いというわけではなく、この制度の適用をするには前年比で1.5%以上の増加が必要となりますので、ご注意ください。
いかがでしたでしょうか?
最低賃金の引き上げや人件費の増加は、中小企業にとっては大きな問題です。
そんな中で、少しでも従業員に還元をしつつ企業の負担を下げるために、賃上げ促進税制の適用を検討してみてはいかがでしょうか。