住民税の特別徴収税額決定通知書が届いたら?
2019.06.05
役員報酬を損金に算入するためのルールとは?
スタッフの箱田です。
法人の役員に支払う役員報酬。ルールに従って支給した場合のみ、法人税法上の損金に算入することができます。
役員報酬に独自のルールが定められているのは、従業員給与と異なり、受給者である役員自身が支給額を決定できる場合が多いため、
無制限に損金に算入できることを認めてしまうと、恣意的に役員報酬を操作して、納税額を減少させる不正が発生する可能性があるためです。
では、そのルールとはどんなものかご存知でしょうか。
まず、役員報酬の改定等を行う場合には、株主総会等での決議が必要になります。
さらに、法人税法上の損金に算入できる役員報酬は以下の3つに限られており、
一般的に中小企業では、⑴定期同額給与と⑵事前確定届出給与として、支給されることが多いです。
⑴定期同額給与
⑵事前確定届出給与
⑶業績連動給与
なお、上記の⑴~⑶のいずれかに当てはまる場合でも、支給額のうち「不相当に高額」な部分の金額は損金に算入することができないとされます。
まず、⑴の定期同額給与とは、事業年度中の毎月の役員報酬の支給額が同額であるものを指します。
なお、事業年度中に支給額が改訂された場合でも、
改定前後の各期間でそれぞれ支給額が同額であれば、定期同額給与となります。
また、定期同額給与として支給する役員報酬の支給額を改定する場合には、以下の①~③のうち、
いずれかに該当していなければ、認められません。
①通常改定
事業年度開始日から3ヶ月以内に行われる株主総会等の決議によって改定する場合は、定期同額給与の要件に当てはまります。
②臨時改定事由
法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更などのやむを得ない事情がある場合の改定を指します。
③業績悪化改定事由
その法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由による改定を指します。
単に経営成績が悪化したことのみでは「業績悪化改定事由」には当てはまらないとされ、
会社の経営上、役員給与を減額せざるを得ない客観的な事情があるかどうかにより判定することとされています。
なお、業績悪化改定事由の例示として、国税庁の「役員給与に関するQ&A」では以下の3点を挙げています。
【参考】(抜粋)
・ 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
・取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
・ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、
経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
なお、業績悪化改定事由については、以前弊社のブログでも特集しておりますので、ご参照ください。
また、⑵事前確定届出給与とは、役員賞与など、予め決めた時期に、確定した金額を支給することを定めて、それに従って支給する給与をいいます。
事前確定届出給与を法人税法上の損金に算入するためには、事前に株主総会等の決議を行い、また、「事前確定届出給与の届出」を税務署に提出する必要があります。
この「事前確定届出給与の届出」の提出期限は、以下のうち、いずれか早い日とされています。
①事前確定届出給与の株主総会決議をした日または職務の執行を開始する日から1ヶ月後
②事業年度開始の日から4ヶ月後
この提出期限までに届出を提出していない場合や、賞与の支給時期・金額が届出書と異なる内容の場合は、全額が損金として認められないため、注意が必要です。
上記の通り、役員報酬はルールに従って支給することが重要ですが、その支給額が高額である場合も多いため、
会社の経営成績や資金繰り、納税額、また、受給者である役員自身の所得や納税額など、様々な影響があります。
そのため、早めのタイミングで検討し、正しい情報を元に手続きを行うことが重要になります。
役員報酬の改定等を検討されている場合は、専門家である税理士に相談されることをおすすめいたします。