取適法とは?下請法はどう変わる?
2025.12.24
取適法とは?下請法はどう変わる?
2025年も残りわずかとなりました。
「来年の話をすると鬼が笑う」と言いますが、確実に訪れる新年に向けて、少しずつ備えを進めていくことの大切さを感じる時期でもあります。
今回は、2026年1月から施行される取適法について、ご紹介したいと思います。
取適法の正式名称は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、中小受託取引適正化法を略したものです。
簡単に言うと、立場の弱い会社(下請け・中小企業)を、不公平な取引から守る法律です。
従来は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)がこの役割を担っていました。
下請法は、元請企業が下請企業に不利益な扱いをしないよう、中小企業や下請事業者を保護する法律として長年運用されてきました。
しかし、下請法では、「下請」「元請」という言葉が上下関係を強調しすぎており、対等な取引のイメージが沸かず、適用範囲の限界(個人事業主などが対象外のケース)、手形サイトの長期化、下請事業者が声を上げにくい構造、近年の急激なコスト増分を十分に価格に転嫁できない、などの問題がありました。
こうした背景を受け、下請法の理念はそのままに、言葉・対象・ルールを現代化し、価格転嫁も含め、中小企業が適正に利益を受け取れる環境を整備するため、2026年1月から取適法として、改正されることになりました。
この取適法について、主な改正ポイントをご紹介します。
「下請」という言葉には、委託側と受託側の上下関係を連想させる側面があります。
そのため、法律の名称以外にも、「親事業者」⇒「委託事業者」、「下請事業者」⇒「中小受託事業者」に変更され、「下請代金」は「製造等委託等代金」に変更されます。
下請法の対象となる取引は、以下の4つに分類されていました。
製造委託:物品の製造や加工を委託する取引
修理委託:物品の修理を委託する取引
情報成果物作成委託:情報成果物(映像コンテンツやプログラムなど)の作成を委託する取引
役務提供委託:サービス(運送、警備、情報処理など)の提供を委託する取引
取適法では、上記に加えて、「特定運送委託」が追加されます。
特定運送委託とは、荷主が自社事業に係る物品の運送を他の事業者に委託する取引のことです。
下請法では、適用対象か否かは、発注者である親事業者と受注者である下請事業者の資本金の組み合わせで判断されてきました。
製造委託・修理委託 親事業者:資本金3億円超、下請事業者:資本金3億円以下
情報成果物・役務提供委託 親事業者:資本金5千万円超、下請事業者:資本金5千万円以下
取適法では、上記の資本金基準に加え従業員数基準が設けられ、いずれかの基準を満たす場合には、取適法の適用対象となるように変わります。
製造委託・修理委託・特定運送委託 委託事業者:常時使用する従業員300人超
中小受託事業者:常時使用する従業員300人以下
情報成果物・役務提供委託 委託事業者:常時使用する従業員100人超
中小受託事業者:常時使用する従業員100人以下
この基準が追加されたことにより、資本金が小さい場合でも、従業員数が一定規模に達している企業は、取適法の適用対象となりますので、注意が必要です。
代金の決済における振込手数料は、以前から原則として買手(親事業者)が負担するものとされてきましたが、「書面合意」があれば売手(下請事業者)側に負担させることが認められていました。
しかし、取適法では、「合意の有無を問わず、中小受託事業者に振込手数料を負担させてはならない」と明記されることから、従来の売手負担については、法令違反(勧告対象)となる恐れがあります。
取適法は、下請法で定められた4つの義務と11の禁止行為を引き継いでいます。
また、禁止行為については、強化・追加が行われています。
委託事業者が必ず守らなければならないルールです。
発注する際は、取引内容(発注内容、金額、支払い方法など)を明確にした書面を中小受託事業者に渡す必要があります。
物品などを受け取った日から60日以内に代金を支払う期日を定める必要があります。
取引内容を記録した書類を2年間保存する必要があります。
もし支払いが遅れた場合、年率14.6%の遅延利息を支払う必要があります。
委託事業者が絶対にやってはいけない行為です。
取適法では、下請法で定められた11項目に、新たに2つの禁止行為が追加され計13項目の禁止行為が定められました。
中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品などの受領を拒否すること。
物品などを受領した日から60日以内に定めた支払期日までに、製造等委託等代金を全額支払わないこと。
中小受託事業者に責任がないのに、発注時に定めた製造等委託等代金を事後的に減額すること(協賛金名目での減額なども含む)。
中小受託事業者に責任がないのに、受領した物品を一方的に返品すること。
市場価格より著しく低い代金を設定すること。
委託事業者が指定する物品を購入させたり、サービスの利用を強制すること。
中小受託事業者が、委託事業者の下請法違反を公正取引委員会などに通報したことに対し、取引停止などの不利益な扱いをすること。
委託事業者が中小受託事業者に支給する原材料等の代金を、製造等委託代金の支払期日より前に精算すること。
一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形(支払期日が長い手形など)を製造等委託代金として交付すること。
委託事業者のために、金銭やサービスなどを無償で提供させること。
発注後に委託事業者が費用を負担せずに、注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること。
上記が下請法で定められている禁止行為です。
取適法で追加された禁止行為は下記のとおりです。
中小受託事業者からの価格協議の求めに対し、応じなかったり、必要な説明をせず、一方的に代金を決定する行為。
従前から、対価に着目した買いたたきの規制はありましたが、今回の改正により、交渉プロセスに着目した規定として追加されました。
代金の支払い手段として、約束手形の交付が全面的に禁止。
あわせて、一括決済方式や電子記録債権についても、物品等の受領から60日以内に満額の現金が受け取れないものは、違反(支払遅延)とみなされます。
取適法に違反した場合、主に以下のペナルティやリスクが生じます。
1.行政処分(勧告・公表)
違反が認められた場合、公正取引委員会から是正勧告を受け、違反内容とともに、企業名がインターネット等で公表されます。
また、減額した代金の返済、遅延利息の支払等、具体的な是正措置が命じられます。
2.刑事罰(罰金刑)
取適法の義務違反があった場合、刑事罰として50万円以下の罰金が科される可能性があります。
3.社会的信頼の失墜
法令違反による企業名の公表は、取引先や株主、消費者からの信頼低下を招きます。昨今はコンプライアンス(法令遵守)により厳しい視線が注がれていますので、大きなリスクとなる可能性があります。
2026年1月から施行される取適法ですが、従来の下請法に比べ、取引内容・禁止事項ともに範囲が広がりました。
これを機に一度、【委託事業者の立場】から、違反項目がないか【中小受託事業者の立場】から、不当な減額をされていないかどうかを確認されてはいかがでしょうか。
監修 税理士法人FLAIR 代表社員 福島美由紀