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2013.05.29
65歳までの雇用義務とは?高年齢者雇用安定法の義務・努力義務と具体的な対応策
従業員の高齢化が進む中、「65歳までの雇用義務」への対応は、単なる法令順守にとどまらず、企業の財務や人材戦略を左右する重要な経営課題となっています。
実は、2025年4月をもって高年齢者雇用安定法の経過措置が完全に終了しました。これにより、すべての企業において、あらかじめ定めた基準に関わらず「希望者全員の65歳までの雇用」が完全義務化されています。
本記事では、義務化の内容から、70歳までの努力義務への対応、そしてシニア人材を「コスト」ではなく「戦力」に変えるための具体的な一歩を解説します。
公的年金(厚生年金)の支給開始年齢が65歳に引き上げられたことに合わせ、現在、全企業に対して以下のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。
・65歳までの定年年齢の引き上げ
・65歳までの継続雇用制度(再雇用・勤務延長)の導入
・定年制の廃止
2025年3月までは、過去に労使協定を結んでいた企業に限り「会社が認める基準を満たした者だけを再雇用する」という特例が認められていました。しかし、2025年4月以降はこの特例が消滅しました。
現在は、本人が希望すれば、原則として全員を65歳まで雇用し続ける義務があります。「能力不足だから」「勤務態度が悪いから」といった理由で再雇用を拒否することは、解雇と同等の厳しい法的リスクを伴うことになりました。
2021年4月の法改正により、70歳までの就業確保措置を講じることが「努力義務」となりました。これが「70歳定年時代」と言われる背景です。
努力義務のため罰則はありませんが、深刻な人手不足が続く今、優秀なシニア層に活躍し続けてもらうことは企業生存の鍵となります。選択肢は以下の5つです。
・70歳までの定年引き上げ
・定年制の廃止
・70歳までの継続雇用制度(自社・グループ会社)
・他社への再就職支援
・創業支援等措置(フリーランス契約や社会貢献活動への資金提供)
特に5つ目の「創業支援等措置」は、社員を個人事業主として支援し、業務委託で関わってもらう手法です。給与所得から事業所得(外注費)に変わることで、会社側は社会保険料の負担を抑えつつ、消費税の仕入税額控除の対象となる場合もあります。ただし、実態が雇用とみなされると社会保険の追徴や消費税の否認リスクがあるため、契約形態には注意が必要です。
古い就業規則のまま「会社が必要と認めた場合のみ再雇用する」といった文言が残っていませんか?これは現在、法違反となるリスクがあります。また、再雇用時の労働条件(職務内容、責任、賃金)を明確に定め、「現役時と同じ給与でなくても良いが、不合理な差は設けない」という同一労働同一賃金への配慮が必要です。
2025年4月から、給与の下落分を補填していた「高年齢雇用継続給付」の給付率が段階的に縮小されています。国の補助が減る分、従業員の手取りを維持しようとすれば、会社側が賃金体系を底上げせざるを得ません。これは実質的な人件費アップを意味します。「同一労働同一賃金」に配慮しつつ、役割に応じた納得感のある賃金体系を再構築しましょう。
また、60歳で一度退職金を支払うのか、65歳まで据え置くのか。これにより、法人の損金算入のタイミングや、支払原資の積立計画が大きく変わります。また、従業員側も「いつ受け取るか」で所得税・住民税の負担が変わるため、シミュレーションに基づいた制度設計が不可欠です。
自社雇用を続けるだけでなく、本人が他社で活躍できるようキャリア研修を行うことも企業の役割です。また、これまでの経験に甘んじることなく、ITスキルなどのリスキリングを促すことで、シニア人材を「高コストな労働力」から「付加価値を生む戦力」へと変えていく努力が求められます。
65歳までの雇用確保は全企業の義務であり、もはや避けて通ることはできません。また、70歳までの就業確保は努力義務とはいえ、「人生100年時代」を見据えた人材戦略の構築は、企業の競争力に直結します。
「継続雇用制度をどう導入するか?」「再雇用後の給与・労働条件をどう設定するか?」といった具体的な制度設計は、会社の財務状況や就業規則、そして高年齢者雇用安定法への対応が複雑に絡み合います。
弊事務所は、税務・法務・労務にわたる士業のネットワークを活用して、貴社の経営をトータルサポートいたします。
監修 税理士法人FLAIR 代表社員 福島美由紀